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髪を梳く女傑──サルッツォのマンタ城壁画と『名婦伝』のセミラミス──
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髪を梳く女傑──サルッツォのマンタ城壁画と『名婦伝』のセミラミス── |
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JaLC DOI | info:doi/10.34577/00004165 |
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アイテムタイプ | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper |
言語 | 日本語 |
著者 |
伊藤 亜紀
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著者別名 |
Ito Aki
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抄録 |
サルッツォのマンタ城サーラ・バロナーレに描かれた《九人の英雄と九
人の女傑》(1420年頃)は、サルッツォ侯爵トンマーゾ3世(1356?-1416 年)による教訓的騎士道文学作品『遍歴の騎士』の登場人物である。その ひとり、二本の槍をもつアッシリア女王セミラミスの姿は、ボッカッチョ の『名婦伝』(1361-1362年頃)などで伝えられてきた「男勝りの烈女」や 「息子と交わった淫婦」という彼女の本質を説明するものではない。 しかしその右隣にいるエティオペの、長い金髪を梳く仕種は、ウァレリ ウス・マクシムスの『著名言行録』(1世紀)が語る、女王が身繕いの最 中にバビロニア陥落の報せを受け、すべてを擲って戦に身を投じたという 逸話に合致する。そしてこのセミラミス像は、ギヨーム・ド・マショー 『真実の書』写本(1390-1400年頃、フランス国立図書館所蔵ms. fr. 22545) や『遍歴の騎士』写本(1403-1404年、フランス国立図書館所蔵ms. fr. 12559)にもすでに見られる。ジェンティーレは、マンタにおけるセミラ ミスとエティオペの図像の取り違えは、画家が壁画制作にあたって直接手 本にした図に起因すると考えた。一方デベルナルディは、『遍歴の騎士』 におけるセミラミスとエティオペの詩節が、本来一続きのものであったと みなし、マンタのセミラミスは実際はアマゾネスのメナリッペ、そしてエ ティオペこそセミラミスであるとした。たしかにエティオペの皇帝冠や宝 玉、そして「青地に三つの金の玉座」という、フランス王家と同じ配色の 紋章は、彼女が9人の女傑のなかでも特別な存在であることを示している。 さらにアーミンで裏打ちされた黄金の縁取りのマントは、下に着た女性の 服を覆い隠し、その男性的気質を強調する役割を果たしている。 ウァレリウス・マクシムスが語り、ボッカッチョが加筆し、そしてフラ ンスの写本挿絵で視覚化された「髪を梳く女傑」は、代々フランスとの政 治的な繋がりを強化し、その文化の影響を色濃く受けてきたサルッツォ で、再度大規模に描かれた。しかしこの雄々しくも女性としての身嗜みを 忘れないというイメージは、必ずしもセミラミスに限定されたわけではな く、15世紀半ばには他の女傑にも共有されることになる。 |
内容記述 |
口絵有り。画像低解像度版/graphics in low resolution
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雑誌名 | 人文科学研究 (キリスト教と文化) |
号 | 47 |
ページ | 33 - 50 |
発行年 | 2016-03-31 |
出版者 |
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
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ISSN |
0073-3938
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コンテンツに関連する検索キーワード | サルッツォ マンタ城壁画 |