@article{oai:icu.repo.nii.ac.jp:00005281, author = {Itoh, Tatsuhiko}, issue = {53}, journal = {人文科学研究 : キリスト教と文化}, month = {Dec}, note = {15-16世紀のフランスでは、他の地域、例えばイタリア、ドイツに比べて、鍵盤楽器用楽譜の写本が少ないことが謎であった。その原因として、フランスではオルガン奏者の手引きとしてのタブラチュア譜(特定の楽器用楽譜)が重用されなかったこと、また、即興演奏が重視された結果、楽譜は本来残すべきものと考えられなかったことが、Y. ロックセトによって指摘されている。本研究が扱う写本には、3つの小分冊と1枚の紙が綴じられており、声楽曲の楽器用編曲やダンスなどの器楽曲が含まれている。各部分で異なる記譜法が使われていることが特徴で、ドイツ・オルガン譜(フォリオ1-6)、ドイツ・リュート譜(フォリオ7)、フランス・リュート譜(フォリオ8-11)、イタリア・リュート譜(フォリオ12-13)が用いられている。この写本(特に第1小分冊)は、かつてW. アペルによって、上記のフランスの空白を埋めるものとしての可能性が示唆されていた。この図書館の音楽部門の目録を作成したM. L. ゲルナーによれば、これらの筆写譜は、初めはバラバラのまま合唱用楽譜集(現Ms. 2750)の中に、別のイタリア・リュート譜と4声の声楽譜からなる写本(現Ms. 2986)と共に挟み込まれていたらしいが、19世紀後半のどこかの時点で一つの写本(現Ms. 2987)として綴じられたと思われ、元々は、アウグスブルク市参事会員であったJ. H. ヘルヴァルト(1520-1583)が蒐集し、その死後(1585-87年)にバイエルン侯ヴィルヘルム5世に売却され、宮廷図書館の所蔵となったらしい。各部分については、寸法が若干異なること、筆写者の一致がないこと、第1小分冊の用紙のみ透かし模様(熊)があること、特定の作曲家の既存の出版楽譜集に関係がないことなどから、元は別の出自であったと考えられる。アペルは、この第1小分冊についての様々な独自の特徴を列挙して、フランスとイタリアの影響がある可能性を示唆しているが、筆者の予備調査では、その根拠の全てが覆されている。結論として、この筆写譜は、フランスあるいはイタリアの作法にも通じた、ドイツで訓練を受けた音楽家あるいは筆写者によって作成された楽譜(タブラチュア)であると考えられる。いずれにせよ、この時代の作曲の過程について依然として完全に解明されていない点(どのように下書きやスケッチをしたのかなど)があるように、こうした筆写譜の成立、特に声楽曲を特定の楽器のために編曲した楽譜の制作(intabulation)について未知の領域があることは、音楽史研究上、興味深い「空白」であるといえよう。}, pages = {27--64}, title = {The Provenance of Munich, Bayerische Staatsbibliothek, Mus. Ms. 2987: A Preliminary Study}, year = {2021} }