@article{oai:icu.repo.nii.ac.jp:00005082, author = {大野, ロベルト}, issue = {52}, journal = {人文科学研究 : キリスト教と文化}, month = {Dec}, note = {紀貫之は撰者の中心となって『古今和歌集』を編纂し、後年には『土佐日記』のような斬新な構造を持つテクストを創造した。その間にも和歌の第一人者として、歌合など様々な場で活躍したことはいうまでもない。 その貫之が、『古今集』でただ一度詠んだのが〈なごり〉という言葉である。古い用例を探ると、『万葉集』では同じ言葉が「難波」という歌枕との関連で登場しており、それが物質的な残留物のみならず、意味の痕跡をも指す概念であったことがわかる。それを踏まえて貫之の歌を分析してみると、詠歌という行為を通して歌ことばがどのように新たな意味を獲得してゆくのかを、ある程度まで明らかにすることができるのである。 また〈なごり〉は、「名残」と表記することや、「な」で始まる音からも明らかなように、〈名〉という語とも重なり合う部分が多い。事実『土佐日記』に幾度も登場する〈名〉に注目してみると、貫之がそこに『万葉集』における〈なごり〉と同様の効果を期待していたことがわかる。 歌枕、あるいはその予備軍というべき地名との関連で用いられることの多い〈なごり〉や〈名〉ではあるが、それらを詩的言語の働きの全体を包括する概念として捉え直すことで、古典文学における意味生成のあり方を焦点化することが本稿の狙いである。 もっとも、結果として見えてきたのは日本文化の特異性というよりは、むしろ普遍性であった。いわば「異化」された名詞である「土地の名」に多彩な意味を担わせるという、古典の歌人たちが実践した手法は、永井荷風のような近代の日本人にも受け継がれているのみならず、「トポス」という用語を整備した古代ギリシャ以来、二十世紀のプルーストやカルヴィーノに至るまで、西洋でも確実に重みを持っているのである。}, pages = {135--162}, title = {〈なごり〉考 : 「土地の名」を中心に}, year = {2020} }