@article{oai:icu.repo.nii.ac.jp:00002562, author = {UEMATSU, Nozomi}, issue = {9}, journal = {Gender and Sexuality}, month = {Mar}, note = {本論文は、作家ドリス・レッシング(1919-2013)の後期作品のひとつで ある『破壊者ベンの誕生』(1988; The Fifth Child)をとりあげ、英国1980年 代の文脈に位置づけることで、本作品をレッシングの当時の功利主義的なサッ チャリズムの家族政策批判として読解する。特に本稿では、作品中に描かれる 登場人物たちの怪奇的な身体表象に注目し、英国社会が提唱する「規範的家族 像」とその実現によって約束される「幸福な家族」の青写真が、いかに母体と 赤ん坊の健康と健常児主義と密接に関連しているかを考察する。この読解を裏 付けるものとして、第一に、80年代の英国保守党が提唱した家族政策に注目 し、そこからサッチャリズムが推進した「伝統的な家族」像(核家族、定収 入、出産、子育てによって育まれる倫理規範)を把握する。第二に、そういっ た「伝統的な家族」とその幸福がいかに作中の夫婦、ハリエットとディヴィッ ドにおいて内面化されている点、また第5 子ベンの誕生によって、その幸福 が、破壊されていくさまが、ゴシック・ナラティブの効果により描かれている 点を論じる。また第三に、モンスターであるベンが、作品中の主要でない登場 人物(障害者、非雇用者等)たちと関連付けられて描かれている点を指摘す る。これらの考察により、ベンの怪物的身体と、ハリエットの「幸せな家族」 への執着は、レッシングのサッチャリズムが提唱する功利的社会における幸福 感の背後に隠された排除の思想への糾弾として読解することができる。この功 利的な社会の構成要員は、より生産性の高さと、健康で「健常な」身体を持つ ことが要求され、また特に「幸福な家族」の形成のために母親たちには「健常 児を出産する」ことが求められるのである。}, pages = {5--29}, title = {グロテスク・マタニティ―ドリス・レッシング『破壊者ベンの誕生』の「幸福」と優生思想}, year = {2014} }